「日本頭頸部外科学会」参加レポート

2020年1月30日(木)〜31日(金)の2日間、沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターにおいて「第30回日本頭頸部外科学会・学術講演会」が開催されました。

補聴器業界では聞き慣れないこの学会ですが、耳鼻咽喉科領域(耳科学・鼻科学・口腔咽頭学・喉頭科学)を中心とした外科治療・手術や、がん治療を研究する学会であり、多くの耳鼻咽喉科医師が参加していました。

展示ブースでは、地域の専門店である「(株)琉球補聴器」や「マキチエ(株)」が出展していました。

今回は30周年を迎える記念すべき学会ということで、特に学会のあゆみを紹介するパネルが参加者の目を引きました。

耳関係の主なトピックは?

頭頸部外科学会の耳科学領域での演題群は「耳科手術」「聴器悪性腫瘍」をはじめ、教育セミナーにおいては「耳管開放症の診断と治療」「メニエール病の手術(内リンパ嚢手術)」「経外耳道的内視鏡耳科手術(TEES)」についての講演がありました。

シンポジウムでは「人工聴覚器・手術手技の進歩」というテーマで、人工内耳や人工中耳(VSB)、骨固定形補聴器(BAHA)、聴性脳幹インプラント(ABI)の手術について、術中の映像を見ながら学ぶ機会がありました。

ランチョンセミナーでは「CTの進歩、そしてこれからの耳鼻領域画像診断」というテーマで、進歩したCTによって、内耳周辺の解剖の状態が画像として以前に比べてはっきり見えるようになり、診断や手術に大きく貢献している様子が伺えました。

「耳科手術」の中心的なトピックは真珠腫について、特に先天性や外耳・中耳奇形の合併症を伴うものや、残存を見逃さないための術式についての発表がありました。

耳にも「がん」がある?!

「聴器悪性腫瘍」の群では「外耳道癌」についての発表が多くありました。

外耳道だけでなく、中耳にも発生する可能性もありますが、非常にまれで100万人に1人程度です。ただ、発見や診断が難しく、場合によっては周辺領域に浸潤していることもあります。詳しくは国立がん研究センターのサイトをご覧ください。

聴器がんについて

聴器とは聴覚に関する臓器のことで外耳、中耳、内耳に分類されます。聴器がんとは聴器に発生するがんのことですが、その頻度は非常にまれで100万人に1人程度の割合で発生し、頭頸部領域のがんの1%から2%程度を占めています。発生する場所としては外耳が最も多く、次に中耳であり、内耳のがんはほとんど見られません。がんの場所が深部に位置すればするほど治療前に診断がつきにくいという特徴があると言えます。良性疾患として治療を受けた後に、実際はがんだったとわかるケースもしばしば見られ、診断が難しい疾患の1つとしてあげられます。がんの種類としては扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)(がん情報サービスへリンクします。)が約70%と最も多く、腺様嚢胞がん(せんようのうほうがん)、基底細胞がんと続きます。

出典:国立がん研究センター>さまざまな希少がんの解説 > 聴器がん

こういった病気の存在があるので、補聴器を扱う立場としても、しっかり耳鼻咽喉科と連携をとって、患者さん・ユーザーさんの耳の健康を守る必要があると実感しました。

次回の頭頸部外科学会は2021年2月18日(木)~19日(金)に大阪市のコングレコンベンションセンターで開催予定です。お近くの補聴器業界関係者の方も、見聞を広めるため参加されてみてはいかがでしょうか。