〜購入した補聴器を別のお店でメンテナンスしてもらうということ〜
基本的に、補聴器は購入したお店でその後のメンテナンス(再調整やトラブル対応)を受けるのが一般的です。
しかし、転居などで、購入店に通えなくなった場合、購入店とは別のお店でメンテナンスしてもらう必要があります。その際は今までお世話になった補聴器販売店や、購入したメーカーのお客様窓口に相談して、転居先で対応してくれる補聴器販売店を探すことになります。
もし、転勤などであらかじめ転居の回数が多いことがわかっていれば、全国チェーン展開の補聴器販売店や補聴器取り扱いのあるメガネチェーン店で購入すれば、その点は解消されるでしょう。
さて、今回お話するのはこれらに当てはまらないケースのことです。
「補聴器を買ったはいいけど、お店の人に相談しても聞こえがちっとも良くならない」
「補聴器を買うまでは良かったけど、購入後のメンテナンスをしっかりしてもらえない」
「何度も調整には行っているけど、きちんとした説明もされず、少しパソコンで調整するだけ、もう通うのがおっくうだ」
このように、補聴器購入後に十分なサービスが受けられず、結局、補聴器店へ通う意欲もなくなり、「補聴器難民」になる方が決して少なくないのが現状です。
自分が「補聴器難民」になっていると感じたら・・・
どうしても購入した販売店に通うことができなくなり、それでも高額で購入した補聴器をなんとかしてほしいと駆け込むとしたら、近隣の別の販売店や、耳鼻咽喉科でやっている「補聴器外来」となります。
「補聴器外来」では、補聴器に詳しい医師が話を聞いてくれます。ただし、その外来に出入りしている業者が、あなたがお持ちの補聴器(メーカー)を取り扱っている場合とそうでない場合では、その後の対応も違ってきます。
近隣に補聴器外来をやっている病院・クリニックがなければ、別の補聴器販売店を頼ることになります。その場合、まずは自分の持っている補聴器(メーカー)の取り扱いがあるかどうか確認しましょう。
ここからが本題です。
他店で購入された補聴器でも対応してくれる補聴器販売店は少なくはありませんが、そのほとんどのお店は善意から対応していて、対応にまつわる時間や手間を本当にわずかな金額でやってくれるところか、もしくは無償でやってくれているような状況です。一部、それなりの金額で対応しているところもありますが、それは自店のサービスに自信があって、その金額でもお願いしたいと思うユーザーさんがいるという実績があってのことだと思います。
中には、他店購入お断りの販売店もあると思います。
しかし、それは致し方ない面もあります。
補聴器の金額が一見して高額なのは、ここに理由があります。
補聴器購入代金には
「本体代と調整・アフターフォロー代(修理実費は除く)」
が含まれていて、最初にすべて販売店に支払っています。
ですので、たまたま最初に購入した補聴器販売店が ”ハズレ” だった場合、購入されたご本人がそのお店にアフターフォローを受けに行かなくても、喜ぶのはその販売店だけです。
彼らは「本体代」と何もしないのに「アフターフォロー代」が全部丸儲けになるからです。
残念ながら、現状では、このような不均衡を調整する制度がありません。
いい加減な販売店だけが逃げ得で、せっかく高額な補聴器を購入したユーザーさんと、真面目な補聴器販売店が損をする仕組みなのです。
もちろん、現在では業界団体を中心に、より良い補聴器販売店が整備されるよう力を入れていますが、すべてのユーザーさんが満足できる仕組みが出来上がるのは、まだ先の話になりそうです。
だからこそ、補聴器購入時の店選びが重要と言われているのです。
信頼できるお店を選ぶのは大変なことですが、ご自身の目で良く吟味してください。
「最初はみんな売ろうとして(接客の)感じがいいから、そんなの見極められないよ」
確かに、そうかもしれません。
補聴器の購入において良い販売店を見極めるのが難しいのはこの点です。
補聴器の販売は、原則としては医療機器の販売でありますが、これから補聴器を買おうと考えている方からすると、高額なサービスを購入する機会でもあるわけです。高額なサービスを販売している場所、例えば不動産販売、百貨店や宝石店、車のディーラー、または高級ホテルやエステなどに行ったとき、お店の雰囲気や接客のレベルが商品(もしくは提供するサービス)の価値に大きく影響するのは言うまでもありません。
ですので、初回の接客印象が良ければ、「ここで補聴器を買ってもいいかな」と思って購入してしまうでしょう。しかし、その販売店の技術レベルが低ければ、その後のアフターフォローで「こんなはずじゃなかった」と後悔することもままあるのが補聴器の世界なのです。
最後に、良い補聴器販売店を見分けるポイントを5つお示しします。
1. 補聴器の試聴や貸し出しをしてくれる
「この補聴器店で買っても大丈夫だろうか?」については、お店とコンタクトを取る頻度や共有した時間がある程度ないと判断が難しいと思います。店員の人柄や対応、技術レベルがご自身の納得いくものであるかどうかは、補聴器の試聴や貸し出しという「お試し期間」のなかで確認ができます。
2. 耳あたりの良い売り文句に注意
「補聴器は簡単」「すぐ良く聞こえるようになる」といった耳あたりの良いセールストークには注意してください。補聴器はメガネと違って、そんなに簡単なものではありません。耳への馴染み具合や、音に慣れるまで、また小さい機械の操作も、最初は時間がかかります。もちろん、買った後のアフターフォローやメンテナンスが重要ですので、それを最初に説明しない販売店であれば、”ハズレ” の可能性が高いです。
3. 安易な値引きをしていない
補聴器をまともに販売・メンテナンスしようと思うと、それに見合った時間や技能が必要です。補聴器を購入したお客様に対して、5年間を目安に対応する余力を持たせるためには、いくら高額な補聴器とはいえ、その場の購入を促すような安易な値引きは、まともな補聴器販売店であれば取らない策だと思います。
4. 補聴器を着けたときの「聞こえの改善の程度」を教えてくれる
メガネを購入する際は、レンズを合わせて矯正後の視力を知ることができます。補聴器も同様に、装用後、聞こえがどのように変化したか、言葉の聞き取りがどの程度改善されたかなど、数値にして評価を受けることができます。試聴の段階で完全な調整がなされるのは難しいですが、今後の方針も含めて、きちんと見通しを立ててアドバイスしてくれる販売店であれば信頼できます。
5. 補聴器の限界を教えてくれて、アドバイスをしてくれる
残念ながら補聴器は万能ではありません。補聴器の性能や、装用者の聴力レベルや言葉を聞き取る力に依存します。プロの補聴器販売店はその辺をよく承知しています。ですので、お客様の状況を把握した上で、難しいことは難しいと正直に伝えるでしょう。またそれだけではなく、代替案やアドバイスもしてくれます。補聴器の販売が上手な方が、補聴器のトータルサポートが上手とは限りません。
補聴器の購入は、人生の中でも大きな決断となる方が多いと思います。補聴器で聞こえを改善して、再びコミュニケーション豊かな人生を取り戻していただくためにも、「補聴器難民」にならないように、お店選びは慎重にしてくださいね。